禁断の木の実
WE300Bシングルアンプ左側、2015年の夏、WE348A(メッシュ)のトップグリッド端子が折れ、やむなく配線を直付けしてそのまま現在に至っていますが、再生音はキャップ(ブリキの端子)を通さない方が勿論情報が多く良好です。
当時、「小唄の粋人」に「右もやるべし!」と煽られましたが、何せ計3本しかWE348A(メッシュ)は持っていなかったので、躊躇していました。
その後、ヤフオクであと1本確保出来、スペアーが2本になりました。
そして、WE300BシングルアンプもTune-upが1,2と実施され、随分と望むような再生音で音楽を楽しめるようになってきています。そうなると、内心ウズウズとするものがあり、また、例によって「件の友人」の薦めもあり、思い切ってやってみることにしました。
右アンプ、トップグリッドの端子キャップを外したところです。
既述のWE310Bよりは小さいキャップですが、ブリキ板を介した接続は同じです。コード(AC Design Conclusion 1,4の内部配線材)をブリキの板にハンダ付けし、板がトップグリッド端子のハンダ部分に接続しそこからWE348Aのグリッド配線材に繋がるという仕組みです。
トップにハンダの層が見えますが、熱烈なWE信奉者は、このハンダも古いWE製が良いと拘っているようです。小生には「本物」のWE製ハンダを手に入れる術もありませんし、「結果オーライの文化系オーディオ」では、ハンダは無ければなお良いが、そうもいかないので、出来るだけ製造半年以内の物を使うよう気を付けてはいます。
古いハンダを綺麗に吸い取ったところです。
僅かにトップグリッドの芯線が見えますが、ここに配線材を直付けします。
AC Design Conclusion 1,4の内部配線材を丁寧に剝き芯線(銀単線)を出します。銀単線はテフロンで包まれていますので、注意が必要です。テフロンは熱に強いため、ハンダごての熱ではなかなか剝けませんので、専用ニッパーのお世話になります。
自在手具で固定して、ハンダを軽くのせますが、少なめにするのがこつかと思います。
上手く出来ました。
初発の印象も良好でしたが、ハンダ等が落ち着いた3日目には、右側のSPからも高域情報が溢れるように出てきだしました。やはり、鮮度感が違います。
グールドやアルゲリッチをこのところ暫く聴いていますが、珠玉の様なピアノのタッチ、並の美しさを超えて官能的でさえある弦の音触は、少なくとも現状では、直熱3極管(敢えて云えばWE300B刻印)でしか味わえないものではないか、と密かに思っております。
「高貴な婦人ともいうべきORIGINAL AUTOGRAPH(五味康祐)」を歌わせるには、女王様の音・「WE300Bという球は王様の音ではなくて、女王様の音なんです。柳腰的な鳴り方をするところがありますからね。(林昭彦=WEの研究家/権威)」を奏でる球が良く似合うというところでしょう。
とうとう、禁断の木の実を味わい始めてしまいました。
とこうしていると、前出の「小唄の粋人」が遊びにみえました。
「師範」になって何年も経ちますが今回も社中の「とりの三味線」を担当なさるとか。案内のパンフレットをお持ちになりました。
「熟年」の方達が、舞台に上がると皆さん背筋が伸びて「シャキッ」となさる様、またその唄声の若々しくも艶っぽいこと、毎度のことながら感嘆せずにはおられません。今年は、どんな感動をもたらしてくださるでしょうか?
さて、「粋人」曰く、モノラルみたいだねー(アルゲリッチのバッハDG2531 088を聴かれて)と仰るではありませんか。ピアノに実体感があり、音楽が濃い、とも。
嬉しいですねーー、こちらの再生意図をしっかりと聴き取ってくれております。
アッカルドのヴィヴァルディOP5ヴァイオリンソナタ(PHILIPS9500396)のB面を聴きながら、「うん、うん」と頷いておられます。あとは、例によって何も言いません。
でも、小生には、それで十分です。
SPの音離れが良くなるほど、音像の中心は、中央に凝縮されてきます。そして、中心から水輪の如く前後、上下、そして左右に音楽が拡がっていきます。そこには、左右のSPの存在は感じられなくなります。
そんな音楽再生を目指して、また少し前進出来たのかな、と思っております。