「As a player and writer and thinker」
by ORRIN KEEPNEWS
エバンスのタッチ=「繊細で優しく常に鋭いペダル・ワークを伴う」といわれる、が好きだ。ジャズピアノアルバムで一番数多く持っているのが、エバンスである。「POWELL」始め、「CLARK」、「DREW」、「kELLY」そして「JORDAN」等々好きなピアニストは沢山いるが、現在では断捨離を経て、それぞれ10枚を超えることはない。エバンスだけが特別で、図抜けている。
今回は、初期の名盤をあたってみた。
「New Jazz Conceptions」 Riverside RLP12-223 ’56年9月18&27日 NYC 27歳・エバンスの初リーダーアルバムのファーストカバーです。
白ラベルでトップに黒のマイクと薄いブルーのリール・ロゴ、両溝、フラット重量盤、所謂「White & Blue Lbl w/"Bill Grauer Productions” Printed at Bottom」の完オリです。
Waltz For Debby始め3曲のソロは、9月18日の録音と後年発表されました。
このエバンスの初リーダーアルバム、同業者、評論家等には絶賛されたと言うが、発売後1年で僅かに8百枚しか売れなかった(O・キープニューズ)とか。
’56年というハードバップ全盛時代には、なかなか認知されなかったようですが、ワンアンドオンリーとも云うべき、「クリーンなタッチワーク」、一音でその存在を感じさせるほどの強い個性は既にしてその片鱗が覗われます。
RLP 1129 ’58年12月15日 NYC 両溝、Blak Lbl w/Siler Print & Logo(Mike & Reel)のステレオオリジナルで、ジャケットには、ジャズ界諸先輩の賛辞が散りばめられています。
業界では評価が高まってきたエバンスは、その後ジョージ・ラッセル、チャールス・ミンガス等の大物との共演録音を経験し、’58年には、あの白人嫌いで有名なマイルスのセクステットに「マイルスが始めて加入させた白人ジャズメン」として加わりました。
インプロヴィゼーションの傑作(「粟村政昭」氏)と云われる「Peace Piece」を始め、初期のエバンスを楽しめます。
小生は、その繊細なタッチ(音触)を堪能するために、ステレオ盤の方を愛聴しています。(以下同じ)
RLP 1162 ’59年12月28日 NYC 両溝、BGPステレオオリジナル。
マイルス・デイヴィスコンボの一つの頂点を窮めたものと云われる「Kind Of Blue(Columbia CL355 ’59年3&4月)」で知的なプレイを披瀝したエバンスは、その後自分のピアノ・トリオを結成し、スコット・ラファロ(b)、ポール・モチアン(ds)と3者が一体化し、対等の立場で対話するかのように進行するトリオの新しいフォームを確立した。
その最初のアルバムが、本作であり、「Autumn Leaves」「What Is This Thing Called Love?」「Blue in Green」を始め、一音一音が芳香を放つが如きエバンスを楽しめます。
エバンスのアルバムの中でも3指に入る愛聴盤です。
RS 9433 ’61年1月~3月 NYC 両溝、BGPステレオオリジナル。
キャンノンボールとの双頭リーダー作とも云うべき本作だが、聴いて見れば、エバンスのサウンドになっていること(アダレイもいつになく神妙に吹いている)が分かります。
キャンノンボールのあくの強さ(まあ、持ち味でもあるが)を避ける方にも、エバンスメインと云う事でお薦めできると思います。(と云う事で、ジャケットはエバンスが写っている裏面です。)
RLP 9351 ’61年2月2日 NYC 両溝、BGPステレオオリジナル。
「エバンス自身も’76年のインタービューで最も好きなアルバムの一枚といっている。」という、このトリオ4枚の中では地味なアルバム(とされている)を好むファンも多いといわれております。
A面1曲目「Israel」で先ずこのトリオの魅力に嵌まってしまい、最後まで聴くことになります。また、派手では無いが、繊細な感覚でリズムを刻むモチアンもGoodです。
RLP 9376 ’61年6月25日 LIVE 両溝、BGPステレオオリジナル。
RLP 9399 ’61年6月25日 LIVE 両溝、BGPステレオオリジナル。
9376と9399、ご存知「The Village Vanguard Live」です。
当日録音された13曲の中、1曲を除いて、「サンディ・・・の方は、不遇の中に世を去ったラファロの追悼の意を込めて出されたため、彼のベースが比較的多くフィチュアーされている曲が揃っている一方、ワルツ・・・の方は、ユニットとしてのまとまりをみせた爽やかな印象の演奏が多い」と云われています。(そんな事はとっくに知ってら-、との声有り)
この4枚、『黙って聴いて楽しむべし。』(ご尤もでございます)
Milestone M-9125 「MORE FROM THE VANGUARD」、’84年に出された未発表集。
何はともあれ、こうして半世紀以上も経った今日、「ビルの瑞々しい美しさを表情豊かに捉えた録音」を望むままに楽しめるのですから、オーディオの世界から足を洗う訳にはいかないのであります。