個性を聴く
EA-1000(クラシック専用)の整流管がWE274B刻印マグネシュームゲッターに落ち着いてから、安心して初段及び次段の12AX7の替え球を選ぶ作業に没入できました。
ATE-2のフォノ回路に使う球(12AX7系)を模索する中で、最終的にWE420A(WE5755)が最良との結論に達した小生は、今回も躊躇なくWE球に的を絞りました。
情報量が多く、その上「WE球独特の旨味」を持った、このサラブレッドとも言うべき球でも、良く聴くと随分と音触が異なります。
問題は、その中からどの個性を選ぶかと云う事です。時間がかかりましたが、楽しく、また結果にも今のところ満足(もっといいWE420A球が出れば・・・)しております。
ATE-2に使用している3本の他に、12本集めて聴き比べて見ました。
なお、前回で外れたクリアットップのWE420A(デートコード5739、クールビューティ)は、この試聴には参加させませんでした。多分、今後も手を伸ばすことはないと思います。
右上の3本が、ATE-2のフォノ回路で現用中です。左からデートコード5952,5939,8026です。この3本は、固定して駄目になるまで使います。それ程気に入っています。
中段の10本ですが、左からデートコード7913,6739(4),6739(2)、6326-2(何故か4桁ではありません),6313-3(〃)、6013,5939,5839、そして8026,6113です。
なお、3本目の6739(2)の上が6739(1)、下が6739(3)です。同じデートコード球の中で、好みの順位をつけて付箋を貼ってあります。
大概はデートコードが古い球が良い傾向ですが、前回同様法則外の逸品がありました。
デートコード6326-2~右へ6113までの7本は、それぞれ特にWE球の特長を発揮しているので、更に、丁寧に聴き比べて見ましたところ、ある程度エージングも出来てきたのでしょう、「8026」と拮抗する球が現れました。
「6113」です。この球は、コレクターに6739(4本)と共に譲って戴いた物で、それぞれ元箱入りでした。価格もそれなりで、現在ネットで売られている(バルク品とかで、元箱等無し)物と比べると4倍くらい(1本=諭吉対応)しましたが、十分にそれだけの価値がある物でした。大袈裟に言えば、「6113」と「8026」があれば、クラシック用のEA-1000はOKです。
それくらいこの2本はGoodです!
若干「8026」の方が明るく、「6113」は渋さが勝ります。ですので、クラシック用には「6113」をトップに、次段を「8026」という形が最良です。
(若い衆は逆も良いとは云っておりますが・・・)
普段なら苦にするアダプターですが、フェーズメーションが工夫を凝らしたCR型のノンNFBフォノイコライザーですので、敬意を表して(本当は細かくて面倒くさい?)そのままです。エージングの成果か再生音に惹かれたせいか、以前ほど気にならず、球と一体物として使っています。
落ち着いたら、今度は右端の12AU7(付属品はJJ)も良い物を見つけてやらなくてはと思っております。(既に動き始めている。)
試聴には、Eminent Solo(0,4mV・1,2Ω)とANNA ARM(ロング)を使って、MC入力Lowに入れました。
Wunderlich GiesenのSchumann「DICHTERLIEBE,op.48」です。この盤は'66年録音ですので、RIAAでOKです。
清らかなテナーが切ないほどに美しく歌います。「詩人の恋」は昔も今もヴンダーリヒ以上の歌を知りません。ステレオのALLE盤とこのモノラル盤、断捨離出来ない「物」であります。この盤は、「6113」がトップで決まりです。
BRAHMS HORN TRIOですが、Barylliが聴きたくて取り出します。この盤で2枚目です。AESカーブを選びました。
弦の艶は、「6113」、管に照準を合わせると「8026」となりますので、どちらでも好きな方をトップにということになります。
因みに、小生寒くなるとブラームスを聴きたくなるのですが、そんな話どっかで聞いた様な気もしています・・・。
FournierのVIVALDI CELLO CONCERT(10インチ)です。
当然DECCAカーブで再生です。RIAAカーブでは、SPの下方にへばり付くように鳴っていたのが、SPの中央で伸び伸びと歌い、抜け出してきます。
これはもう、優雅にしっとりと歌うチェロは「6113」です。
今回、登用されなかった球の中にもJAZZ向きと思われる物があり、また、登場しなかったWE420Aのデートコード球でも、まがい物以外は、楽しめると思います。
が、こうして球の個性を聴き分けて、その中で自分の再生装置で好きな音楽を楽しく聴ける球を選ぶのも、真空管アンプの醍醐味ではありましょう。