怪我の功名
WE300Bシングルアンプ時々掃除をしています。(勿論、他の機器も同様です。)
左側のWE348Aメッシュ(トップマーク/ヴァリュームゲッター)のグリッドキャップを外そうとしたら、あろう事か!348Aのグリッド端子が取れてしまいました(写真参照、トップグリッド端子がキャップに埋まっている)。うぇー!!!マジかよー。
ショックでその日は、TANNOY AUTOGRAPH の音出しせず。
グリッド直結の芯線がその保護用のガラスごと折れてしまっております。トップグリッドの球にも随分と長いことお世話になっておりますが、こんな事は初めてです。この球は、他の球よりもトップグリッドの端子が斜めに付いていたので、いらぬ負荷がかかっていたのでしょうか? 切断面は芯線が錆びておりました。
仕方がないので、翌日、残りの1本(トップマークは都合3本しか持っていない)を取り付けて聞き始めました。
なお、メッシュでプリント球も有りますが、トップマークよりも後発です。
因みに、刻印球はマグネシュームゲッターです。
ご案内の様に、こうした古典球は1本1本が個性を露わに致します。小生の3本も、1番球がこの欠損した球、2番球が右側で使っている物、3番球がストック品です。
1週間、2週間と経ってもあの再生音楽が戻ってきません。右のギターが中央のラックとスピーカーのほぼ真ん中から出ていたのが10㎝ほど右SP寄りです。それに伴い、左側のギターもやはり少し中央寄りです。左のアンプの高域が若干減少しているのです。WE349A(トップマーク)やWE300B(刻印)、さらにはWE274A(刻印・マグネシュームゲッター)と種々交換して試して見ましたが、まあ、我慢の範囲かというところまででした。
初段(上流)で失われてしまったものは、ドライバーやパワー管(下流)では補いきれない、ということでしょうか。
先達によりますと古典球の場合、8割方は皆同様(例、刻印球)の再生音で残りの内1割は周辺パーツで補うことが出来る(つまり9割方は同様の再生音がだせる)が、最後の1割の一番美味しい部分はその球の個性で、他では補えない音があるとか。だから、たった1本の球を大事にするのだとおっしゃっておりましたが・・・。
どうにも、あの再生音が欲しくて、覚悟を決めて、試して見ました。
そうです、取り敢えず強引に嵌め込んで、音が出るか実験です。WE274Aを差すときのドキドキ感は、もう半分は逃げ出したいくらいでした。WE300Bのグローがパット紫色に出た瞬間、何と! 音楽が鳴りだしました。
WE348Aメッシュ(トップマーク)1番球、生きていました。しかし、いかにも危なっかしくて、心もとない状態です。
以前、管球王国で新氏が、トップグリッド端子に配線材を直付けしていた写真が載っておりましたが、小生のは、その上を行く(?)芯線直付けです。
そこは「文化系のオーディオ」、怖い物はありません。エイヤ! とばかりに半田付けしてしまいました。(決して真似しないで!勧められる対応ではありません。)
恐る恐るヒーター点火、OKです。 今度は、整流管接続、Good!です。
溢れるように件の高域が出てきております。バランスも戻って、スピーカー離れの良い再生音です。左右のSPから離れて、ステレオ音場が真ん中に凝縮されております。奥行きも、上下もしっかり出ております。久し振りの音場感からか? 更にヴァイオリンが美しく伸びております。ピアノは、輝かしくも、繊細な響きでウットリさせてくれます。
見てくれは若干悪いですが、再生される音楽は素晴らしいです。
図らずも、小生お得意の接点(接続機器)を減らすことになりました。これが、しっかりと効いております。
一般的には、ピンコードがキャップの金属に接続され、金属を伝わって今度はWE348Aのトップグリッド端子(金属の蓋を経て芯線)へと繋がる訳ですが、今回はピンコード+芯線です。「文化系オーディオ」としては、願っても無い状態になりました。
鮮度が上がっております。
年に3~4回は、遊びにみえるKo氏です。夏と冬は必ず。もう、かれこれ三十数年の付き合いになりますが、所謂「博耳」3人衆の一人です。やはり、Analog派でLP盤は小生の倍はお持ちで、特にニューオリンズ、シカゴ、スイング系のジャズは圧巻です。楽器はラッパ、ギターを嗜み、玄人はだしです。ここ十年余は、「小唄」に嵌まり、三味線を弾きながら唄っております。小生も何度か発表会にお邪魔させて戴きました。小生より一回り年下の粋人です。
先ず、鄭京和の無伴奏パルティータ2番(DECCA SXL6721 1W/1W)を聴きました。
彼は「いい音だ」とは、ほとんど云いません。「悪くない」これが最上の褒め言葉です。今回も「悪くない」を戴きました。ヴァイオリンや、ギター等を数曲聴いたあと、最近小生が嵌まっている2枚をかけました。「かぐや姫ってこんなにいい声をしていたのか」、「この陽水の盤は録音がいいねー」(内心、してやったり!)。とまあー感想を戴きました。
その彼曰く、「右もやるべし!」。
「・・・」。
さすがの小生も、WE348Aメッシュ(トップマーク)球を弄る決断は付きません。
現有のWE348Aです。左端がメッシュ(トップマーク)3番球、2つ目がプリント・デートコード無しの錨マーク、3つ目がデートコード113,4つ目が 〃 239、右端が 〃 252です。
プリント4本(小パンチ)は、それぞれ個性があるにしても、それ程の違いは感じられませんが、端のメッシュ(トップマーク)球は、3番球と雖も、プリント球とは次元が異なります。(WE300Bの刻印とJAN/CWのプリントとの違い、と云えば分かり易いでしょう。)
デートコード452以降の球は、既に手放しました。上記の4本はかなり良いと思って残しましたが、直接比較するとプリント2本とメッシュ(トップマーク)1本でしたら、喜んで交換(追金も可)させて戴きます、とさえ云わせてしまうくらいです。
残りの人生を考えると、1本予備があれば十分と思っておりました。しかし、今回のアクシデントを経て、1番球と同級の球であれば申し分ないが、せめて2番球以上の物をあと1本でいいから欲しいと思う。(プリント球は総て放出してもいいから。)
タンスにしまい込んでおられる、好事家が放出するのを待つしかないのだろうか。