醸成
夏の終わりに、WE300BシングルアンプのB電源回路、チョークインプット後2つ目のチョークの前後にAMCBフィルム630V10μF、47μFをパラって望外の成果を得たことは述べましたが、その後試聴を繰り返した結果、10月の初旬には300Bのヒーター回路にも10μFをパラって更なる成果を得ました。
取り外してあるのは、AMCA600V0,47μF(オイル)です。結局、チョークインプット後のB/G(ケミコン)10V1500μF×2にAMCB(フィルム)10μFとMC-DA(シルバードマイカ)0,022μFの組み合わせが、現状最良と云うことになりました。
オーディオ備忘録10/4には、「初発の印象、SNがよく音楽が静かに鳴り、SUKの唸り声とVnの擦れる音しか出ていない(スークのバッハの無伴奏)、余計な音が無く、音楽のみが自然にしっかりと再生されている。これは、エージングされる程に更に生き生きと音楽が鳴ると期待出来る。」と綴っております。
WEのオイルは、勿論悪くはありませんでしたが、AMCBフィルムは更に上下のレンジが伸び、再生される音楽が躍動感に溢れ、楽しくなりました。また、余韻の美しさにも惹かれます。クラシックには、AMCBフィルムが一押しです。(小生宅では、JAZZにはWEのオイルがGoodです。)また、AMCA、AZ-CAP、WEST-CAP等のオイルも種々試して見ましたが、ヒーター回路のこんな小容量でも再生音が変化するのには、今更ながらに驚きました。(WE300B刻印が、直熱管であることも影響しているのかも知れません。)ゆめゆめヒーターを侮るべからず、ということでしょう。
最終的には、再生音の微妙なバランスをMC-DAシルバードマイカ0,01μFと0,022μFで調整しました。考える以上に、0,01の差は大きいものがありますので、ケースバイケースでの使用となりましょう。
300Bのヒーター電圧は5Vを超えないようには配慮していますが、ヒーター回路の2つ使っているチョークトランスが暖まると抵抗値が変化するので、夏・冬とDALEの抵抗NS-10(10W)の値を1Ω~1,2Ωで調整しています。(勿論この抵抗でも再生音が変わる事はご案内の通りでして、同じ値ですと5Wタイプよりも10Wの方がSNが良くなります。)
Silver in Autographでは、全く触手が伸びなかった「RING」ですが、M/RED in Autographになって、更に周辺機器の改良により、ようやく数年振りに聴く気になりました。
嵐の場面、低弦が混濁も無くしっかりと再生され、床を這って迫ってきます、しかも、軽くて自然です。こんな低弦の再生音を聞いたのは、我がTANNOY Autographで初めてです。このような低弦の再生は難しいと定評(?)のあるAutographですが、それは、やはり、スピーカーのせいでは無く、良い信号をスピーカーに送ってあげられない周辺機器、更に云えば、部屋を含め使いこなしている所有者の情熱と感性のなせる技(結果)、といったら言い過ぎでしょうか? 少なくとも、我が家に限って云えば、小生の「怠慢と力不足」の結果が従前の再生音楽であった、と云わざるを得ません。前後、上下に広い音場、歌手達が伸び伸びと存分に歌っているのが聴き取れます。
先日知人を伴って再訪して下さった、件の「厳口博耳」氏にも聴いて戴きました。そうです! 彼にWagnerをお聴かせ出来る様になったということです。
「RING」は、当初は3枚のライトモティーフ集も含めて、ショルティ盤を聴いておりましたが、LDのLive盤を視聴するようになってからは、ベーム盤を聴いています。今では、上記のベーム盤(レーベル周辺文字が8時半~3時半がORIGINALです。)しか残っておりません。中でも、ワルキューレの第1幕「ジークムントとジークリンデの出会いの場」
が好きです。 「Ein Quell! Ein Quell!」
「Erquickung schaff ich . Labung biet ich dem lechzenden Gaumen: Wasser,wie du gewollt!」・・・
Rysanekの何と艶めかしいことか! 「ウェルズングの愛の動機」を優しく奏でるチェロの素晴らしさよ! 「エロス」を感じないお方はあるまい!、とさえ思うほどだ。
そして、昔そうであったように、棚からFlagstad Knappertsbusch VPO の「Wesendonck Lieder」を取り出して聴いてしまいました。
「RING」が静かに鑑賞できるようになってきております。素晴らしいことであり、有り難いことであります。この上は、ベームVPOのモーツアルトレクイエムが、十全に再生されるよう願うばかりでありますが、そう遠くはないような気もしております。